「カクヨム」の作り方とは? はてな×KADOKAWAの担当者が語る開発秘話

はてなとKADOKAWAによる共同開発でスタートした小説投稿サイト「カクヨム」。開発が決定したわずか半年後にローンチというタイトなスケジュールの中、京都と東京の2拠点で行うプロジェクトは、どのように進められていったのでしょうか。カクヨムに携わる4人の担当者に、仕事の進め方や開発の裏話、ユーザーの反応を見て感じたこと、今後の展望を伺いました。(取材日:2016年4月18日)
カクヨム担当者4人の集合写真
  • 株式会社KADOKAWA
    カクヨム編集部
    編集長

    萩原 猛さん

  • 株式会社KADOKAWA
    デジタル戦略推進室
    担当部長

    伊藤 誠さん

  • 株式会社はてな
    サービス開発本部
    プロデューサー

    二宮 鉄平

  • 株式会社はてな
    サービス開発本部
    ディレクター

    森口 貴之

まずは自己紹介をお願いします。

萩原 KADOKAWAでカクヨム編集部の編集長を担当している萩原です。もともとWeb小説の書籍化を含めた、書籍の編集をしています。カクヨムには立ち上げから参加し、どういうサイトにするか考えるポジションにいます。

伊藤 KADOKAWAのデジタル戦略推進室に所属している伊藤です。カクヨムの開発プロジェクトマネージャー的な位置付けで、開発におけるKADOKAWA側のフロントエンドのような役割を担当しています。これまでにもKADOKAWAのWebコミックサービス「コミックウォーカー」をはじめ、さまざまなWebサービスの立ち上げに携わりました。

二宮 はてなのサービス開発本部第4グループでプロデューサーとディレクターを兼任している二宮です。カクヨムでは開発側の責任者として、プロジェクト全体の統括とWeb版のディレクターを担当しています。

森口 同じくサービス開発本部第4グループでディレクターをしている森口です。カクヨムのアプリ開発の統括に加えて、Web版の開発チームとのやりとりや調整役をしています。

決め手は「はてななら、一緒に“考えて”作ってくれそう」

カクヨムの一番の特徴を教えてください。

萩原 KADOKAWAとはてなさんが組んだことに尽きると思います。KADOKAWAのやりたいことに、はてなさんが持っているWebやコミュニティの知見を乗せたものがカクヨムなんです。

KADOKAWAさんがやりたいこと、というのは?

萩原 まずは理念として「Webという自由な場所に集まる才能や作品を発掘したい」という考えがありました。ただ、私はテレホーダイ世代で、今の世代のWebについてそこまで明るくありません。その点はてなさんは、今のWebだけでなく、それに触れている人たちが何を考えているかについてはるかに詳しい。KADOKAWAの理念に対して「こうするといいんじゃないか?」という提案をしてくれます。

KADOKAWAさんが小説投稿サイトを作ろうと考えた経緯はどんなものだったのでしょうか。

萩原 Web小説の書籍化を3年ぐらいやっているのですが、この現場にいると、才能ある人物が出てくる速度とその才能を編集者が見出す速度がとにかく速いと感じるんです。小説投稿サイトの立ち上げがあと1年でも遅ければ、その間に世の中はすごい勢いで変わってしまう。1年後まで待てない、待っちゃいけないという言語化できない焦燥感がずっとありました。社内からの「早く立ち上げなきゃいけない」というプレッシャーも大きかったです。

萩原 猛さん

萩原 猛さん

二宮 有望な作家さんならランキングに少し載っただけでオファーが掛かるんでしょうか?

萩原 作品が公開されてから2週間くらいで声を掛ける例も最近は増えてきているようです。1ヶ月後だと「3、4社目ですね」という返事になって、2ヶ月経ったら「10社目ですね」。だけど、声を掛ける早さを極めた先にあるのってただのギャンブルなんですよ。

確かに賭けのようになってしまいますね。

萩原 また、すでに独自の文化が出来上がっている他社の小説投稿サイトから書籍化したい作品を見つけようと思っても、その文化から外れるものはなかなか見つけだすことができません。自分たちの戦略に沿った本を作れず、単に世の中の流れに乗るだけになります。となると、やはり自社で小説投稿サイトを運営していくべきです。

伊藤 はてなさんが集英社さんと共同開発されているマンガ投稿サービス「少年ジャンプルーキー」を見て、どういうサービスを作ればいいのか一緒に考えてくれそうだと感じました。開発が決定した2015年秋から半年も経たない2016年2月29日にサービスインというとんでもないスケジュールが予定通りに進んだのは、はてなさんならではだと思います。

はてなから見て、スケジュール的に厳しくはありませんでしたか?

二宮 KADOKAWAさんからお話を頂いたのは2015年6月で、その時点で一緒にサイトを作っていきたいという意思はもうありました。当初はマンガ投稿サービスなどを開発した実績のあるチームで主に進めようと思ったのですが、スケジュールと開発工程を考えると、兼任ではサービスインに間に合わない。そこで、経験のあるメンバー何人かに加え、着手するまでに他のスタッフにも声を掛けて調整し、新チームを作りました。

短期で開発を進めるためのチーム編成だったんですね。

二宮 メンバーがやりたいと思っていたことや強みが発揮できそうなことを重視した形になりました。タイポグラフィに造詣の深いデザイナー、新サービスの設計に一から携わりたいと言っていたエンジニア、小説をよく読んでいるメンバーにも入ってもらいました。

はてな側は開発に着手するまでに体制を整えましたが、開発準備を進めていく上で両社のスピード感にずれはなかったのでしょうか?

二宮 KADOKAWAさんはとにかく仕事が早いという印象があります。大きな企業の意思決定にはもっと時間が掛かるというイメージでしたが、全く違いました。

伊藤 KADOKAWAの経営統合の成果としてエンタテインメントノベル局を設立したことが一番大きいです。カクヨムのプロジェクトはエンタテインメントノベル局が予算を持って進めている企画なので、他の部署に比べると意思決定が早い。

萩原 KADOKAWAの場合は局自体が1つの会社のようになっています。一般的な社長のポジションが、エンタテインメントノベル局の局長である三坂(三坂泰二氏)になるイメージです。そして、彼自身のフットワークが非常に軽いため、カクヨムについては「こういうことがしたいです」と直接説明をして、その場ではんこを押してもらえる距離感なんですよ。

二宮 三坂さんは打ち合わせにもいつもいらっしゃいますね。なので話を持っていくたびにそこで話が決まる。

萩原 その場で決裁が行われているようなものですね。

予想以上の反響は「いきなりエベレストの頂上に連れて行かれたようだった」

実際にカクヨムの運営をスタートしてみて、手応えはいかがでしたか?

萩原 正式オープンの時点で投稿された作品は15,000作品を超え、予想の3倍以上も集まりました。

二宮 小説を投稿する機能や使い勝手に対する反応もすごく良かったです。

森口 使いやすいという意見を見てほっとしたのを覚えています。ユーザーさんは時間をかけて小説を書く分、思い入れが強いということを実感しています。

KADOKAWAさんは、このような盛り上がりについてどう思われたのでしょうか。

萩原 想定以上の反響だったこともあり、かなり驚きました。少人数の人間によって始まった企画が少しずつ大きくなっていく、というのではなく、いきなりエベレストの頂上に連れて行かれたみたいな。

伊藤 誠さん

伊藤 誠さん

伊藤 プロが気軽に書く場所にもなっているようです。出版社からしてみると、こうした行為を全面的に肯定しているみたいで悩むところではあるのですが……(笑)

プロの作家さんがあえてカクヨムを選ぶのはなぜだと思われますか?

萩原 作家さんによってさまざまだと思うのですが、「書いたから読んでもらいたい」という、おそらくとても純粋な理由だと思います。1冊の本にする文量にはなっていないけれど、どうしても書きたくて書いた個人的な小説とか。過去に刊行した作品の後日譚を描いた作品とか。

伊藤 プロにとっても良い場になっているんだな、と実感しますね。

カクヨムのこだわりを挙げるとすれば何でしょうか?

萩原 実は一番意識したのはジャンルなんです。全部で7つのジャンルを設定し、トップページでもそれぞれをできるだけフラットになるよう扱っています。

伊藤 最初の狙いとして、いろいろなジャンルにきちんと光が当たるようにしたかったんですよね。ファンタジーやミステリーだけでなく、SFや恋愛・ラブコメにもたくさん投稿していただいています。

萩原 もう1つあえて挙げるとすれば、明確に書籍化を打ち出したことでしょうか。ずっと紙で公募に出していた人が、カクヨムで初めてWeb小説を書いたというケースもあると思います。こういう世界があることを提示できたんじゃないかなと。

二宮 だから正式オープン前から募集を始めた第1回「カクヨムWeb小説コンテスト」では、書籍化を視野に入れて「10万文字以上」という募集規定を設定したんですね。

萩原 はい、そうです。書籍化を意識させて、ジャンルがたくさんあって、編集者も読むという場所で、果たしてどんなものが投稿されるのだろうかと考えました。少なくとも今ある小説投稿サイトとは違うものが出てくると思いました。

伊藤 当初集まった約15,000作品のうちコンテストへのエントリーが約5,800作品。我々が思う以上にユーザーさんの期待値が高かったのだと思いました。

コンテストへの投稿作品は期待通りでしたか?

萩原 ジャンルごとにばらつきがあると感じました。例えば、ファンタジーはWebでの書き方が確立されているせいか、やはり数は多いですね。それに比べると、ミステリーなどの場合はWeb小説における書き方のフォーマットがまだ出来上がっていない印象です。そういったものも、今後カクヨムで洗練されていけばいいなと思っています。

ユーザーの声を直接聞く、情報はすべてオンライン共有……はてな流の受託開発

KADOKAWAさんとはてなはそれぞれ、どういう役割分担でプロジェクトを進めていったのでしょうか?

伊藤 萩原からプロジェクトの方向性について細かい部分まで聞いていたので、それをサービスに落とし込むとなるとどうなるか、はてなさんと一緒にディスカッションして決めていきました。

KADOKAWAさん側が東京で、はてな側の開発スタッフはほぼ全員が京都。双方の考えを共有するのは難しくなかったですか?

二宮 開発に入る前に、実際にWeb小説を書いている方をKADOKAWAさんの本社へお呼びして、ヒアリングをする機会がありました。その場で頂いたご意見を両社で共有して、共通の課題意識として開発中もずっと持っていました。

ヒアリングはどんな内容だったのでしょうか。

森口 あらかじめ「普段どういう風に書いていますか?」「どんなところが問題だと思っていますか?」など質問を用意してお聞きしました。小説の書き方は人によって少しずつ違うので、主に使い方を掘り下げていました。

二宮 「こういうことで困っているから、それを解決する機能は絶対いるよね」と両社で確認していきました。読者からの反応で何が一番うれしいかを聞いてみると、「全然気にしません」という方もいれば「コメントがうれしいです」と答える方もいて。かなり幅広かったですね。

森口 「どうやったらランキング上位にいけるか意識している」という声も多くありました。

二宮 控え室で原稿を書き始める方もいて驚きました。「今日の更新がまだ終わってないんです」って。

萩原 そうそう!

二宮 後ろから実際に書いている様子を見学させてもらったんですが、すごく参考になりましたね。

開発に入った後はどう進めていったのでしょうか。

二宮 アジャイル開発手法の1つであるスクラム開発を取り入れました。1〜2週間という一定の期間で何をやるか決めて、作ったら振り返るという進め方です。スケジュールがかなりタイトだったので、振り返り期間を1週間単位にして、その都度KADOKAWAさんにお見せして、フィードバックを頂いたところは次週の開発で修正していました。

伊藤 どの機能を作るかの優先順位もディスカッションして決めていきました。ローンチ後もかなり頻繁に「ここを変えたい」という要望をお伝えしたのですが、柔軟に対応していただけたと思います。

二宮 鉄平

二宮 鉄平

二宮 小説投稿サイトをすごくシンプルに捉えると、小説が投稿できれば最低限は完成している。しかし競合サービスが多い市場なので、周辺機能を充実させなければいけない。例えば近況報告ができるブログを用意するとか、アクセス数を表示するとか……。ティザーサイトのアンケートから頂いた多くのご意見を参考に、KADOKAWAさんと相談して開発の順番を変えることもありました。

森口 年末に予定していた投稿受け付け開始日に間に合うよう、まずWeb版で“書く”部分を作りました。その後に小説を選べるページ、“読む”部分を2月29日の正式ローンチに向けて開発し始めました。アプリ版の“読む”部分は投稿受け付け開始日よりも前の、10〜11月くらいに作っていました。

二宮 Web版のAPIをそろえてからアプリを作るのが本来の作り方なんですが、今回はそうじゃなかったんですよね。

森口 こういうデータがくるだろうと予想したダミーのAPIを作って、それに合わせる形でアプリを作り、そこに実際に出来上がったAPIを結合させていきました。この進め方は社内でもやったことがなく、KADOKAWAさん側にも開発途中のモックを使っていただくだけだったので、心配されているんじゃないかと思いながら開発していました。

仕様に関して、KADOKAWAさんは不安に思われていましたか?

伊藤 はてなさんへの信頼があったので問題ありませんでした。2週間に1回は必ず会っていましたし、コミュニケーションは取れていたと思います。

萩原 対面で話していたのはとても大きかったですね。

進行状況がKADOKAWAさんからも把握できる状態だったんですね。

二宮 開発で使用した資料はオンラインストレージに載せて、すべて共有していました。

伊藤 進行状況も共有できるように、タスク管理ツールのTrelloも使っています。たまに「このタスクの優先順位がなかなか上がらないのはどうして?」って突っ込んだり(笑)

二宮 ははは(笑)。機能を削ってでも早めに出すべきなのか、という議論もしましたね。話し合った結果、リリース時期を延ばしたりもしました。

開発の中で思い出深い機能はありますか?

伊藤 傍点やルビが使える「カクヨム記法」が好評なんですよ。

萩原 開発初期に、はてなさんから「小説で最低限必要なものはなんですか?」と聞かれて「書籍ではモノクロで印刷されるから文字色を変える機能の優先度は高くない」「逆に傍点とルビは絶対に必要」「可能であれば文字のサイズを変えられるといいかもしれないけど必須ではない」など、いろいろお伝えました。

二宮 ルビをどう表現するか考えたときに、記法を使うアイデアが浮かんだんです。はてなでは記法を使う投稿ツールを作ってきているので、仕様はこちらからご提案しました。アプリのほうは“読む”体験にとにかく集中できるよう、Web版にはない背景色や文字サイズの変更機能などを重視しました。

萩原 そういえば、スマートフォンで小説を書きたいという人が予想以上に多かったですね。

森口 アプリ版をリリースしてみると「スマートフォンで書けない」というご意見が意外とありまして。"読む"ことにフォーカスすると決めて開発していたので、多少は覚悟していましたが、想定より多かったですね。

二宮 スマートフォンのブラウザからでも一応書けるようにはしていますが、最適化しているというわけではないんです。

萩原 スマートフォンで書いておいて家でまとめて投稿する、という使用シーンは想定していました。ところが、スマートフォンで書いてそのまま投稿したい、と。僕としては「バックアップ取らなくていいの? 大丈夫?」って思ってしまいます(笑)。でもこれが今のWeb小説の書き方なんだろうなと、ジェネレーションギャップを感じました。

森口 データが消えてしまうかもしれない、という発想がそもそもないのかもしれないですね。

萩原 パソコンのブルースクリーンに頻繁に悩まされた世代としては衝撃です(笑) 。カクヨムのユーザーって、20代が一番多いんです。その次に多いのは10代ですね。

仕事には“雑談的”なコミュニケーションが必要 遠隔開発ならではの悩み

開発を振り返ってみて、はてなから提案したアイデアで印象的なものは何でしたか?

萩原 キャッチコピーの色です。はてなさんがキャッチコピーに色を付けるというアイデアを提案してくれたおかげで、トップがすごく華やかになったんです。

カクヨムのトップページにはイラストがないですね。

萩原 僕は絵を目立たせるサイトにはしたくないとずっと思っていたんです。でもトップページに絵がないと地味だという意見も確かにうなずける。僕たちにはその両方を解決できる策を思いつけませんでした。

森口 貴之

森口 貴之

森口 トップページに絵がないことで、デザイナーも結構苦労していたようです。アイキャッチになる要素がないので、サイトを訪れたときにどこを見ればいいのか分からなくなりそうだという懸念がありました。その解決策として、キャッチコピーに色を付けて、そこに目が行くようにしたらいいんじゃないかと。

萩原 タイトルは作品の一部で、書籍に巻いてある帯のキャッチコピーは宣伝・広告であるというのが編集者の認識です。帯を外して売っても宣伝・広告がなくなるだけなんで別に不備ではないですよね。作品と切り離すことができるからこそ、あざといことを書いてもいい(笑)。

森口 KADOKAWAさんがWebなどの宣伝で使用するキャッチコピーの文字数が35文字だとお聞きしたので、カクヨムのキャッチコピーの上限も35文字にしています。

ライトノベルのレーベルが集まっている小説投稿サイトでイラストを入れたくないというのは意外な気もします。

森口 イラストがきれいなところにばかり読者が集まる、というのを避けたかったんですよね。

萩原 いいイラストレーターさんに声を掛けて、きれいなイラストを載せて、それで作品に人をたくさん集めるというのも小説のあり方として少し違うなと思っていました。それがたとえ評価されたとしても、物語だけに対しての評価ではないと思うんです。

もし「もっとこうすればよかった」と思ったことがあれば、教えていただけますか?

萩原 僕がもっとはてなさんのオフィスに行くべきだったなと思っています。毎日会議をしたいとかではなく、なんとなく開発の空気を肌感覚で知っておいたり、食事をしながらコミュケーションを取ったりすることも大事だったのではないかと。カクヨムをどういうふうに、メンバーがどんな分担で作っていたかをよく知らないままなんですよね。僕が無茶なお願いをしているのかどうかも分からない。

森口 それは開発チーム側も同じでした。僕たちディレクターは窓口として萩原さんや伊藤さんとのやりとりをまとめ、開発メンバーに伝える役割ですが、どうしてもその場で聞いた温度感やニュアンスが失われてしまうんですよね。KADOKAWAさん側の意図を正確に伝えるためにも、もう少し開発者と関わっていただく機会を用意しておけばよかったです。

エンジニアと萩原さん・伊藤さんが会う機会はあまりなかったんですね。

二宮 なかなかありませんでした。開発側が忙しかったことも理由の一部ではあるんですが……。ただ、コミュニケーションの役割を一部の人間に集めたからこそ、開発メンバーはタスクに集中できたというメリットもあったと思います。

森口 反省点を踏まえて、最近はKADOKAWAさんとの打ち合わせにエンジニアが1人ずつ同席しています。はてなの開発チームの特徴として、開発者が「なぜこれを作っているのか?」というのを非常に意識するんです。

二宮 萩原さんがどういう意図でこの機能が欲しいと思っているのかについて実際に聞きたいという意見が出ていまして。これからは開発チームも交えて打ち合わせをするといった直接的な交流もしていきたいですね。

萩原 僕としては「ユーザーがこういう行動をとれるようにしてほしい」という要望しかないんですが、それを伝えるのが難しい。紙に書いて示せば正確だというものでもないですし、ふわっとした口調のニュアンスで伝えて理解していただく、という部分があると思うので。

二宮 そうそう、そうなんですよね。

萩原 仕事って、雑談の中で生まれる気がするんです。KADOKAWAの編集部でも、雑談の時間をもっと増やそうと考えています。席が近い編集者と別々の仕事をしながら「雑談でもするか」と話題を振ってみたり、どこかで笑い声が聞こえたら「何があったの?」とのぞいてみたり……。そこから生まれるものの方が大事なんじゃないかと思うんです。

なので、機会があればぜひ京都オフィスに行きたいです。1ヶ月ほど滞在して開発チームの皆さんと雑談をたくさんすれば、また少し面白いことができそうな気がするんですよね。それがカクヨムの1周年企画になるかどうか……。

伊藤 最近はチャットツールのSlackを導入しました。これでかなりはてなさんとのコミュニケーションが増えた気がしますよ。

二宮 Slackを導入した理由も、先ほど萩原さんがおっしゃっていたこととまったく同じです。打ち合わせは時間が限られていて決定事項を決めることが中心になってしまうので、そこからこぼれ落ちる雑談の場みたいなものを作りましょう、という意図ですね。

伊藤 萩原さんにもぜひ使ってもらいたいんですが……。

萩原 僕の理解が追いつかなくて、登録に時間が掛かりすぎてしまって(笑) 。

書き手が才能を表出する場所に カクヨムの今とこれから

カクヨムで、今新しく取り組んでいることを教えてください。

萩原 応募のために登録したアカウントを、次のイベントがあるまで使わないという方も当然いると思います。そういう方々に投稿していただけるような施策を考えたいです。

二宮 コンテストが終わって、これからが本番だなという感じもあります。機能追加もどんどんしていきます。最近ではKADOKAWAさんの編集部の方々が作品をレビューするという動きも始まりました。萩原さんも実際にレビューを書かれています。

新着レビューで編集部の方のコメントが読めますね。

二宮 喜んでいるユーザーさんが多いです。KADOKAWAさんの編集者に見てもらえるというのはカクヨムの大きな特徴だと思うので、こうした動きをどんどん前面に出していきたいですね。

森口 レビューする作品はどう選んでいるんですか?

萩原 選び方は2つあります。1つはキャッチコピーです。少しでも気になったらとりあえず読んでみて、キリのいいところまで読んで面白ければレビューを書きます。もう1つは、仲の良い友人たちに面白い作品を教えてもらうこと。自分1人だとどうしても限界があるので、こいつに聞いたら面白い作品を教えてもらえるに違いないという友人に協力してもらいます。「あいつが面白いって言ってるんだから読んでみるか」って。

これから作ろうとしている機能についても教えていただけますか?

二宮 次にやろうと考えているのは検索機能の強化です。想定していたよりたくさんの小説が集まっているので、どうすれば面白い作品を見つけられる仕組みができるか探っています。自分から作品を発掘していきたいという人たちのニーズに応えられるよう、力を入れて取り組んでいます。

森口 アプリには通知機能を付けたいです。読んでいる作品が更新されたり、好きな投稿者さんの新作が公開されたりしたとき、ファンであればその情報をすぐ受け取りたいと思うので。Web版の開発とのバランスを見て、ぜひ取り入れていきたいです。

「縦書きで読める機能が欲しい」という声も多いとお聞きしました。

萩原 Web小説における縦書きは本当に必要かどうか、もう少し考えてみたいと思っています。縦書きと横書きって、何かをメディアミックスするくらい違うものだと思うんです。

伊藤 縦書きで読めるようになったら、“書く”側でも縦書きで入力する機能が必要になりそうですね。

萩原 縦書きで読みやすいものを書いたら横書きで読む多くの人たちから評価が入らない、という流れが起こりそうだとなんとなく想像してしまいます。もちろん縦書き機能の選択肢は常に残しておきたいと思います。

カクヨムで力を入れている書籍化については動きはありますか?

萩原 コンテストに参加していない一般ユーザーの投稿作品も書籍化が決まりました。編集者が常にサイトに注目していますので、こうした動きは今後も出てくると思います。新しく始まる「エッセイ・実話・実用作品コンテスト」(2016年6月1日~2016年7月14日)では、書籍化可能だと編集部が判断した作品はすべて刊行していきます。

最後に、カクヨムの今後の展望についてお聞かせください。

伊藤 いわゆる“オタクっぽい才能”を表出できる場が、以前と比べてかなり変化している気がするんです。昔はそれがマンガで、そこからだんだんとアニメにいったりゲームにいったり、一時期はライトノベルだったりした。こうした時代の流れの中で、才能が集まる場が変わってきていると思うんです。今は、それが小説投稿サイトなんじゃないかと。

才能をさらに表出させていける場所としてカクヨムを作りました。これからさらに才能が集まってくるような気がしています。カクヨムでは、才能のいい流れを生み出せるようにしたいです。

二宮 自分たちだけではできない大きなサービスをKADOKAWAさんと一緒に作っていっています。カクヨムではいきなりエベレストの頂上からサービスが始まるという貴重な経験をさせていただいています。カクヨムを良いサービスに成長させていけるよう、引き続きKADOKAWAさんと協力して頑張っていきたいです。

森口 KADOKAWAさんとご一緒できて楽しい部分って、はてなだけでは出てこなかった視点やアイデアに出会えたときなんですよね。お互いの会社の特長を持ち寄って開発していくコラボーレション感があります。

はてなは今後もKADOKAWAさんと協業してカクヨムの開発を進めていきます。今後の開発についての意気込みなどがあればお願いします。

森口 はてなでは、単なる受託開発でなくパートナーさんと1つのチームとして開発にのぞめています。カクヨムをもっとこうしたい、KADOKAWAさんとチームになりたいという方に弊社に入ってもらってより良いサービスをつくっていきたいです。

二宮 僕たちと一緒に刺激のある開発をしてくださる方、はてなで一緒にカクヨムを盛り上げていきましょう!

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